〜Dark side of the moon〜
通勤電車





 駅のホームに2両編成の電車が入ってきた。
ほとんど降りる乗客はおらず、混雑した車両の中に身体ごと押し入れるようにして乗り込む。田舎とはいえ、市の中心部に向かうこの路線は毎朝身動きがとれないほどのラッシュとなっていた。
 直子の通う私立校は進学熱が盛んであり、この時期は受験優先ということで授業はほとんど無かったが、今日は1週間ぶりの登校日であった。周りには同じ学生服を着た生徒たちも多い。
 
 扉の脇にある手すりのところに場所を確保して、ほっと一息つく直子。寒い季節ということで、自分も含めて周りのサラリーマンや学生はコートなどの厚着をしている。車内の暖房が効いているのと、ラッシュでお互いの身体が密着し合っているため、少し汗ばむような状況である。
 ただでさえ気だるい朝の通学なのに、熱気と周囲から立ち昇る体臭が鼻につき、憂鬱とした気分になる。

「(何か…朝から疲れちゃったな…)」

 窓ガラスの入った扉に体を預けながら、ため息をつく。気分だけではなく、体も何だかだるい。身体の奥のどこかに何ともいえない感覚がうずいているような、すっきりしない気持ちがずっと続いている。
つい先ほど見た夢のことを思い返すが、詳しく思い出そうとするほど自分でも恥ずかしくなってしまい、ほんの少し顔を赤らめる。

「(ただの夢…よね…)」

   自分に言い聞かせるように心の中で繰り返すと、外の流れる景色に視線を移す。見慣れた景色と単調な振動がひたすら続く。昨日の寝不足がたたったのか、一瞬うとうとする直子。

 電車が次の駅に止まったのか、反対側のドアが開いて、さらに乗客が乗り込んできた。乱れた靴音が聞こえ、大勢の人が押し込まれてくる様子が感じられた。混雑が一層ひどくなったことで、窓の方を向いていた直子の背中にかかる圧力も大きくなる。

「ん……」

 思わず小さなうめき声をあげた直後、直子の身体に奇妙な感覚が走る。

「(やだ…痴漢…?)」

 お尻を自分の後ろにいる誰かが撫で回している。最初は電車が発車したことでバランスを崩して寄りかかってきた乗客がいるのかと思ったが、気持ちの悪い感覚はしばらく続いている。明らかに故意としか思えない。体をよじって逃れようとするが、その余裕もないほどドアに押し付けられてしまっている。声を上げたかったが、これまで経験のない事態に逡巡してしまう。
 とりあえず相手の手をどかそうと、かばんを持っていない方の手を後ろに回してスカートの裾を必死に払う直子。しかし、予想外の事態が彼女の頭を混乱させた。

「(触られて…ない…?)」

 撫で回されるような感触が続いているのに、あるはずの痴漢の手がない。驚いて後ろを振り返ったが、そこには無理な体勢で小説本を読んでいる女性がいただけであった。にらまれたと勘違いしたのか、嫌々そうに本をしまってそっぽを向く。

「(何…どうなってるの…?)」

 下着を直接触られているということだろうか。スカートの裾を必死に下に引っ張るが、さらに大胆に、柔らかなお尻が上下にこねくり回されるような感覚がダイレクトに伝わってくる。まるで足元に小さな子供が潜んでいて、直接真下から悪戯されているかのようであった。しかし、そんなことは普通に考えてありえない。

「ん…やぁ…や……」

 もうどうして良いかわからなくなり、身をよじって小さくうめき声を上げる。しかしそんな彼女に追い討ちをかけるように、何者かの”手”が下着ごとお尻の隙間にねじこまれる。

「ひぁぁっ!」

 思わず小さな悲鳴を上げてしまった。何事かと周りの乗客が直子の方をちらっと見やる。恥ずかしさでいっぱいになり、真っ赤になる直子。大勢の他人の注目を集めてしまったことで焦ってしまい、必死に押さえていたスカートの裾からも手を離して、さりげなく振舞おうとする。

 そんな直子の行動とは無関係に、制服のスカートの中では異様な愛撫が続いていた。今度は後ろからパンティを引っ張りあげられ、柔肉に布地が食い込む。

「(いやぁ…何か……やだぁ…)」

 急激に股間が熱を帯びてくる。朝の快感の残り火が一気に燃え上がってきたのだろうか。そんな身体の変化を見逃さずに、手による愛撫は直子の一番恥ずかしい部分へと移っていく。

「(やめ、やめてぇ……)」

 周囲の乗客の目の前で股間を押さえるわけにもいかず、ただ内腿をぴったり合わせるようにして侵入者をはばもうとする。しかし、そんな抵抗も虚しく、パンティの布地が敏感な柔肉と擦れ合う感触が、直子の全身にはっきりとした女の悦びをもたらした。

「(もぅ……だめぇ…)」

 あまりの恥ずかしさに、額を窓に押し付けるようにして下を向き、目に涙を溜めて必死に耐える直子。愛撫はさらに大胆になり、谷間の端に隠されていた一番敏感な突起を正確にとらえ、ゆっくりと押し込むように撫で回す。

「くふぅっっ!!」

 今度は悲鳴にも似た叫びを上げてしまう。もう、周囲の乗客がどんな顔をしているのか確かめることもできないほど、羞恥心が彼女の心を支配していた。快感のためか、それとも絶望感からきたものか、全身が小刻みに震えて頬を一筋の涙が濡らす。

 絶え間ない愛撫により愛液が溢れ出し、下着と恥ずかしい場所が一体化してしまったのかと勘違いするほど、布地と柔肉が絡み合う。

「(このままじゃ…だめ…恥ずかしい…よぉ…)」


 …その時、電車に急ブレーキがかかり、直子の学校の最寄り駅への到着を知らせる車掌のアナウンスが流れる。

「(駅、着いた…)」

 やっと電車から出られる。そう思った瞬間、いつの間にか下半身の違和感が消えているのに気がついた。直子のいた側のドアが開き、彼女はそのままホームに押し出された…。

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 よほど放心状態であったのか、その後どうやって学校まで歩いて来たのか良く覚えていない。先ほどの電車の中での出来事も夢だったような気もしたが、下半身に残るもどかしい快感の残り火が、紛れも無い現実だったことを証明している。
 下駄箱を開けて上履きを出し、靴を脱ごうとしゃみこんだ時、内腿から股間にかけて、ぬるっとした感触が直子を襲った。

「!!!」

 予想以上の濡れように驚くと同時に、先ほどの痴態を再び思い出して赤面してしまう。これ以上刺激しないようにゆっくりと立ち上がろうとするが、太腿に一筋の液体がパンティの裾からこぼれ落ち、焦る直子。

「(やだ…見られちゃう…)」

 慌てて上履きに履き替えると、急いで女子トイレに飛び込み、個室の鍵をかけた。パンティをそっと下ろすと、洋式便器に座り込む。

「こんなに…濡れてる」

 目の前の下着の濡れ様が、再び彼女の羞恥心を高める。電車の中で自分は一体どんなに恥ずかしい姿をさらしていたのだろうか。そして彼女の視線が、脚の間にある女の繁みに移る。控えめに薄く生えている陰毛の先が濡れてまとまっていた。半分無意識に手を伸ばして、繁みのあたりを撫で回しただけで、腰のあたりに痺れるようなもどかしい刺激が走る。

 そのままヘアをかき分けるようにして白い中指を谷間に沈めていく。電車の中で十分過ぎるほどに潤った狭間は、時間が経った今でも簡単に彼女の指を受け入れる準備ができていた。もう一本くらい入りそうであったが、経験の少ない彼女は無理な挿入をためらってしまう。その代わりもう一方の手で、すでに顔をのぞかせていた女芯を脇から優しくつまむようにして愛撫する。

「ひあぁぁっ!」

 身体を仰け反らせて快感に悶える直子。再び新しく分泌された愛液が、太腿を濡らしながら便器に少しずつ垂れ始める。

「(学校で…こんなことしてる…だめぇ……)」

 背徳感が頭をよぎるが、より大きな快感がそんな彼女の気持ちを押し流してしまう。必死に押し殺そうとしながらも、どうしても小さなあえぎ声が洩れてしまう。落ち着きのなくなった下半身は、刺激が高まるたびに悶えるように動き、上履きがトイレのタイルと擦れ合う音が個室の中に響く。

「ん…いやぁ………んぁぁっ!」

 稚拙な愛撫であったが、両手の先が細かく動くたびに、激しい快感が彼女を支配していく。

「もう…イッ……ひんっ!……あぁぁぁぁっっっ!」

 息が止まって頭の中が真っ白になる。足がトイレの床から離れ、便器の上で座ったまま体を丸めるようにして絶頂を迎える。最後は派手に嬌声を漏らしてしまった。もし外に誰かいたら個室の中の異変に気付いたであろう。

 しばらく快感に身を浸していた直子だったが、次第に体の力が抜け、元の姿勢にゆっくりと戻っていく。まだ下半身は痺れて力が入らず、足は小刻みに震えている。
そして挿し入れていた指を女淫からゆっくり抜き出そうとした瞬間、黄金の液体が勢い良く噴き出し、手のひらを濡らす。

「……いやぁっ!」

 便器に跳ね返る小水の音が、学校のトイレの中で達してしまったという事実が、彼女の羞恥心をよりいっそう高めていく。とっさに水洗レバーをひねる直子。

「どうしよう…こんな…」

 流れる水の音を聞きながら、放心したようにトイレの壁を虚ろな瞳で見つめる直子だった……。






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