〜Dark side of the moon〜
夜(その1)





 駐車スペースに適当に車を突っ込ませると、一目散に実家に飛び込んだ。遅い時間になってしまったせいで、家族は皆寝静まっていて家の中は真っ暗であった。廊下の電灯のスイッチを探り当てて点けると、床に座り込んでほっと一息つく。

「何…だったんだろ…」

 天井の古臭い白熱灯をぼんやりと眺めながら、先ほど体験したトンネルの中での出来事を思い返そうとするが、ショックで気絶するより前に何があったのか良く思い出せない。

…ふと投げ出した足の先に目をやると、下着が絡みついたままであった。

「やだ…」

 気が動転していたせいか、ずっとノーパンのままで運転していたのであった。車の外から見られるはずはないが、こんな時間とはいっても実家の近くはさすがに人通りや対向車がちらほらとあったわけで、恥ずかしさに真っ赤になる直子。

「今日はもう、寝よう…」

 疲れきった体を引きずり、ふらふらと自分の部屋に入ってとパジャマに着替えると、ベッドに入る前にふと鏡台を見やる。

「(疲れてる…のかな)」

 肩口のあたりまで伸ばした黒髪を軽くかき上げながらぼんやりと自分の姿に見入る。少し疲れた感じがするものの、黒目がちの大きな眼が特徴的な白い顔が鏡に浮かび上がる。
直子はどちらかというと、学校ではおとなしい部類に入る方であった。真面目な性格と相まって目立たないことも多かったが、そんな彼女に魅かれている男子も少なからずいるとの噂もあった。

 軽くため息をつくとベッドの中にもぐり込む。一晩寝て、今日のことはすっきり忘れてしまおう…。そんなことを思いつつ、すぐに深い眠りに落ちた。

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……夢を、見ていた。

 自分の前に一人の女の子が立っている。泣いているのか、下を向いて小刻みに肩を震わせていた。
見た感じ中学生くらいであろうか。おかっぱに切り揃えた綺麗な黒髪が特徴的である。

「(あなたは…誰…?)」

 何となく知っている子のような気がする。確かめるために少し背の低い相手の顔を覗き込もうとした瞬間、突然女の子の顔で視界をふさがれ、唇に温かいものが触れる。

「(やぁ…あ…)」

 突然のキス。女の子の腕が直子の背中に回され、身体同士が密着する。経験の無い彼女は面食らってしまうが、何故か悪い気分は全くしなかった。それどころか、甘美な感覚が密着した所から全身に広がっていく。

 体重を預けてくる女の子を支えきれずに後ろ向きに倒れこむ直子。いつの間にか2人はベッドの上で絡み合うように横になっていた。女の子の手が直子の形の良い胸のふくらみをそっと押し上げるように動き、そのまま優しく何度も揉み上げる。
重ね合わせていた唇がそっと離され、そのまま直子の首筋から鎖骨のあたりにかけて愛撫するようなキスが繰り返される。

「ん…イヤぁ……あ…!」

   触れ合った場所から広がる甘い刺激と、吐息が肌をくすぐる感触が直子の女性としての感覚を呼び覚ましていく。
そして、いつの間にかブラジャーごと服が捲り上げられてしまい、女の子の手が直接乳房に触れる。

「やめてぇ…そんな…とこ…」

 ふくらみの先端、敏感な突起に手が軽く触れた瞬間、本格的な快感が頭の中に弾ける。ほんのわずか愛撫されただけなのに、薄桃色の乳首が固く尖っていくのを自覚する。

「ん…あぁ…だめぇっ………」

 今度は女の子の舌が先端に絡みつく。予想外の大きな快感が直子を襲い、腰を跳ね上げるようにしてストレートに反応する。
まだ男性経験のない直子だったが、女としての悦びを受け入れるに十分な資格を備えている身体は少しずつ愛撫を受け入れつつあった。そんな彼女に追い討ちをかけるように、さらに少女は大胆な行動に出る。
 上半身への愛撫に耐え切れず、もどかしくすり合わせるようにしていた両太腿の間に手を割り込ませ、そのまま脚を割り開くように広げると、パンティの上から女性としての大切な場所に押し当てる。

「そこはっ…だめぇっ!!!」

 慌てて手で遮ろうとしたが、何故か腕は鉛のように重く、彼女の意思通りに動こうとはしない。それどころか閉じようとする両足にも全く力が入らず、女の子はやすやすと直子の太腿の間に顔を埋めてしまう。

「やぁ…だめ…だったらぁ……」

 盛り上がった丘を下から上になぞるように舌が這う。2、3度上下させただけで、すでに湿り始めていた恥ずかしい場所は、唾液だけではなく、彼女自身が分泌させた液体で下着の上からでもわかるほど潤い出す。

「もうやぁ…感じちゃ……う……ぁあっ」

 舌を女陰の谷間に挿し入れるかのように動かす女の子。その動きに応じて溜まっていた愛液が外へあふれ出し、パンティのわきからも滲み出す。

「きゃふぅっ!ひぁ…んあぁぁっ!」

 首を左右に振ってはしたなく嬌声を上げる直子。そして女の子の手がパンティの腰の部分にかかり、お尻の方から少しずつずり下げようとする。

「やめ……!!!」


 抵抗する気力を失いかけていた直子が悲鳴を上げた瞬間、耳元でベルが鳴るような騒音が響き、視界がホワイトアウトする。

「朝……?」

 目覚ましのベルが鳴っていた。腕を伸ばしてスイッチを切る。
自由に…動く。先ほどまでの痴態は夢の中のことだったのだ。少しほっとしながら身体を起こそうとする。
しかし、何でもない動きがいきなり全身に甘い感覚を呼び覚ます。閉じた太腿のぬるっとした感触。パジャマの下で主張する胸の固い尖りが布地と擦れ合う刺激。

「ひぁぁっ!」

 思わず小さな悲鳴を上げて、パジャマの股間、一番敏感な場所を両手で押さえてしまう。そこは少し触っただけでもわかるくらい、恥ずかしい液体でぐっしょりと濡れていた。

「何で…?夢の中…だったのに……」

 彼女も年頃の女の子であり、人には言えないような恥ずかしい夢を見て、下着をほんの少し湿らせてしまうことだってたまにはある。しかし、今日は異常と言っていいほどの身体の反応が直子を驚かせた。おそるおそる、パジャマの腰から手を挿し入れてパンティの辺りを触ってみる。

「ん……」

 くちゅりという水音がするほどパンティの中に愛液が溜まっていた。そっと手を触れただけでも、新たに零れ落ちた液体がパジャマから布団の方まで浸透して広がっていく。
その粘つきを指でなぞっているうちに、直子の胸は高鳴り、吐息が熱いものへと変わっていった。

 そして直子の手が無意識に柔肌をなぞりながら下着の裾からもぐりこんで行こうとした……その時、ドアの外から母親の声が響く。

「直子。今日は登校日でしょ?早く起きなさい」

「も、もう起きてるから!、着替えてるとこなの!」

 慌てて手を引っ込めて叫ぶ。

何やってるんだろ、あたし、昨日から変だ…。直子は半分靄がかかったような頭を左右に振るとシャワーを浴びに部屋の外へ出た。






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