〜巫女譚歌〜
ナコルル<2>






 目が覚めると、すりこぎで何かをすっているような音が耳元でしていた。

「(ここは…どこ…?)」

 すぐにそこが自分の家の中だということに気付く。

「(そうだ…今は旅から戻ってたんだ…)」

 耳をすますと、薪のはぜる音がする。

「(やだ…火をつけっ放しにしたままだったかしら…)」

 慌てて起き上がろうとした瞬間、自分の手と足の自由が束縛されているのに気が付く。身を起こそうにも、両手とも後ろ手に拘束されてしまっている。

「きゃっ…なに!?」

 見れば、両足もそれぞれ足首を縄で縛られ、片側ずつお互い家の反対側に位置する梁に結び付けられている。動かそうにも両足が限界近くまで開脚させられるほどに縄が引き絞られてしまっている。
そして何より、下半身に何も身に着けておらず、生まれたままの姿をさらしていることがナコルルを慌てさせた。

 不自由な身体を横たえたまま、顔だけ起こして辺りを見回すと、左右に割り開かれた自分の白い脚の間から、見慣れた顔の少女が座っているのが見えた。

「リム…ルル…?」

 つい先ほどの忌まわしい記憶が蘇る。しかし、明るいところで見ると、その顔は愛しい妹そっくりである。着ている黒い巫女装束は、ナコルルが妹に縫ってやったものと色以外は非常に良く似ている。強いて違いを言えば、今目の前にいる少女は、どこか冷たく、寂しそうな表情を浮かべているような気がする。

「姉さま、起きたんだ」

 笑顔を見せてナコルルの方を振り返るリムルル。

「見ないで!…こっちを見ないで…」

 冷え切っていた身体もだいぶ温まっていたらしく、普段通りの声が出る。
真っ赤になって懇願するナコルル。きっとリムルルの方から見れば、女性として最も恥ずかしい部分が、女芯を覆う薄い繁みが丸見えになっているだろう。反射的に足を閉じようとするが、固く結ばれた縄がそれを許さない。

「今さら恥ずかしがったってだめだよ、姉さま。」

 リムルルがにじり寄ってくる。薬草でもすっていたのであろうか、周りには植物の葉や根っこらしきものが散らばっている。

「こうして…温めてあげてたんだから…」

 リムルルの細い指が、ナコルルの太腿を優しくなぞり上げる。

「やだ…触らないでっ!やめてぇっ!」

「姉妹なのに…気にしなくていいのに…」

「あなたは…あなたはリムルルじゃないっっ!」

 突然リムルルの動きが止まり、その顔に冷たく、妖しげな微笑が浮かぶ。

「あたしは、リムルルだよ、愛しい姉さま…」

 そう言って太腿をなぞっていた指で姉の秘所に軽く触れる。その瞬間、ナコルルの全身を甘く痺れるような刺激が走り抜ける。

「ひぁっ!ぁ…ぁ…」

 突然のことに言葉が出ない。

「もうこんなに…なってるんだから…」

 女の繁みの上に軽くのせた指にリムルルが少し力を入れるだけで、驚くほど滑らかに、抵抗無く谷間に沈んでいく。今まで自分でもほとんど触れたことの無い、もちろん誰にも触らせたことなど無い乙女のままの部分の信じられない反応に驚くナコルル。指と柔肉が擦れ合う感覚が、今まで経験したことのない、たまらない快感となって彼女を襲う。

「ちょっと触っただけなのに、すごい反応…。やっぱり姉さまってまだ経験ないんだね。」

 ほんの入り口に指をうずめただけでも、ナコルルの敏感な部分は素直に女性としての反応を示す。
そのまま少しだけ奥に進めた指を”く”の字に折り曲げてかき回すようにすると、侵入者をくわえ込むかのように収縮し、溜まっていた愛液を辺りにまき散らす。

「はぁ……あっ…ぅ……んんっ!」

 わずかに動ける範囲で腰を必死にくねらせて愛撫から逃れようとするが、両足を縄できつく拘束されている状態では無駄な抵抗でしかなかった。身体の奥から熱い液体が絶えることなく湧き出し、床に垂れて小さな水溜りを作る。

「眠っている間…ずっと感じっぱなしだったんだよ、姉さま。こんなに愛液を溜めちゃって」
「凍傷にならないように、薬草をよく塗りこんであげてたの…」

 優しい口調とは裏腹に、今度は顔をナコルルの秘所に近づけると、一番敏感な部分である女芯にそっと口づけする。

「あ……あああっっ!…いや、い…やぁぁぁ!」

 おそらく目が覚める前からずっと続いていた愛撫と、得体の知れない薬草の成分がナコルルの性感を極限近くまで高めていた。リムルルの吐息が女の繁みにかかるだけでも頭の芯に痺れるような刺激が走る。

「ゆる…して…もう…駄目ぇ……」

 立て続けの責めで汗びっしょりになった額や頬に、長い黒髪が張り付いている。そして半開きの口からは涎が垂れ、いつもの凛とした雰囲気はほとんど感じられない。抵抗できないまま身体の奥をかき回され、女芯を責められるという行為がナコルルの巫女ではなく、女人としての性を、無理やりとはいえ確実に呼び覚ます。

「もう……だ…め…おかし…くなる…っ!」

 そんな姉の痴態を上目遣いで見ながら、ますます指の動きを激しくすると同時に、品良く谷間の奥に埋もれている女芯を舌の先で転がすようにする。

「きゃふぅっっ!」

 ナコルルの全身をひときわ大きな刺激が襲い、腰が限界近くまで弓のように反りかえる。

「やああああっーーーーーー!や、やめ、ひぅんっ!!!!!」

 必死に声を抑えていた先ほどまでの様子とは一転して、喉の奥から小屋の中に響き渡るような嬌声を上げる。隣りに家があれば、おそらく聞こえていたであろう。足首につながった縄をきしませながら長い脚をくねらせて身悶えする。

「なんか、くるっ、や、いや…もぅ、だめぇっ」

 ナコルルのしなやかな肢体が一瞬強張って動きを止め、秘所が何かを求めるようにきゅっと収縮し始めた…その瞬間、リムルルは顔を上げ、指も抜いて愛撫を止めてしまう。

「あ……?や……ぁ……」

 思わずリムルルの手を追い求めるように身体を動かしながらナコルルが面食らったような声を出した。いくら精神的に強く潔癖な彼女であっても、絶頂寸前で止められてしまってはたまらない。
困ったような、何かを求めるような表情を浮かべるナコルルの視界に、すり鉢の横にあった黒いものを手に乗せている妹の姿が映った。

そしてリムルルの手がお尻の谷間にあるすぼまりに触れる。

「こっちも温めてあげるね、姉さま」

 ぬるっとした感触と共に、お尻の入り口に異物が押し当てられるのを感じる。そして今まで経験したことのない、不快な挿入感がナコルルの排泄部を襲う。

「やめっ…ぁあっ!…んぐっ」

 リムルルの指と一緒に身体の奥へと少しずつ押し込まれている異物をせき止めようと試みるが、絶頂寸前まで快感を高められた身体は言うことを聞かず力が入らない。リムルルの中指が根元まで不浄の穴に埋め込まれると、もう自分では取り出せないという絶望感と何を入れられたのだろうという恐怖感がナコルルを襲う。

「じゃ、もう一個入れるね」

「あぁ…あ…やぁ……」

 見れば、リムルルが手にとっているのは薬草を練り上げた大き目の丸薬のようなものであった。必死に下半身を緊張させてこれ以上挿入されないように懸命になったものの、自身の愛液でしとどに濡れた菊門はナコルルの意思とは無関係に2個、3個と黒く丸い物体を飲み込んでいく。

 最後の丸薬を入れると、姉の不浄の場所に根元まで飲み込まれた中指をゆっくりとかきまわし始める。 排便するとき以外は普段全く意識しない器官をいじられて、ナコルルの身体をおぞましい感覚が下から上へ走り抜ける。入り口でうごめく指だけではなく、奥の方に押し込められた異物がお腹の中を圧迫する。

「まだ…お尻の穴冷たい…」

 そう言うとお尻に差し入れた方の指はそのままに、親指を一番敏感な突起である女芯に押し当てると、円を描くように指の腹の部分で刺激を与え始める。

「ん…や、やぁぁぁっ!、また、だめぇっ!」

 少し冷めかけていた快感の残り火が、一気に燃え上がってナコルルの身体を支配する。大切な場所は敏感に反応し、奥に溜まっていた液体を吐き出すと、再び熱いものをにじませる。
あまりに直接的な刺激に耐えられなくなりそうなナコルルの細い身体は、腰を中心に細かく痙攣するが、すでに疲れ果てているのか愛撫から逃げ出そうとするような動きは見られない。 流されてはいけない、という声が頭の中で聞こえるが、身体はもう妹の支配下にあることを嫌でも自覚させられる。

 一方、リムルルは女芯を押しつぶしていた指を、そのまま谷間を押し開くようにして柔肉の中に埋没させた。そして同時にお尻に入れた指を内側の襞を押し広げるようにして大きくかき回す。

「……!!、…ぁ、ぁ、そんなところ…広げない…でぇ…」

 まだ乾ききっていないナコルルの頬に涎と涙が入り混じって零れ落ちる。そんな姉の顔を見て一瞬満足そうな表情を浮かべると、秘所と肛門に挿し入れた指同士をつまむようにして、細かく素早い刺激を送り込む。

「ぁ…ぁっ…ひんっ…ひ…ぁ………あ、あ、やぁっっ!」
「あ、あぁぁっ…ぁ…………!!!」

 純粋な絶頂ではなく、おぞましさの混ざった快感がもたらす焦燥感のようなものが限界に達して頭の中に火花を散らす。切れ長の目が丸くなるほど見開かれ、半開きの口からは言葉にならない切れ切れの悲鳴が発せられる。

「姉さま、汚い場所をいじられて、達しちゃったんだね。」

「ちが…違…ぅ……」

 呼吸が止まるほどの衝撃が身体を突き抜けた後、羞恥と背徳感が交互に頭の中を支配する。

「(恥ずかしい…妹の前で…こんな……)」

 本当の妹であろうがなかろうが、もうどちらでも良いような気がした。巫女として、姉として、そして女として恥ずかしい姿を晒してしまったことに対する罪悪感がナコルルの目から涙をあふれさせる。
抗う意思が無くなってしまったかに見える姉の様子を見つめていたリムルルだったが、しばらくしておもむろに口を開く。

「ね、お尻……大丈夫?」

 何のことかわからず聞き流していたが、急にお尻の奥の異物感が大きくなってきたような気がして意識を戻す。

「(やぁ……何?これ?)」

 気にし始めたせいか、不浄の場所が急に熱く感じられた。熱っぽく差し込むような痛みが下腹部に広がり、ごろごろという音を断続的に発するようになる。

「(どうしよう…厠に…行きたくなるかも……)」

 言えばこの縄を解いてくれるだろうか。少し逡巡している間にも違和感は急速に焼けるような痛みに変わって行き、ナコルルを慌てさせる。

「ね、リムルル。縄を解いて欲しいの………んぁぁっ!」

 あっという間に痛みを伴う排泄感が身体を支配する。予想以上の最初の波の大きさに思わず声がうわずってしまい、そして体中からどっと冷や汗が吹きだす。

「縄を解いて、リムルルっ!お願い…だから…」

 もう力を入れ続けていないと、いつ決壊してもおかしくないほどの圧力がナコルルの菊門を襲う。今すぐ縄を解いてもらったとしても果たして間に合うだろうかという不安がつのる。

「だめだよ、姉さま。ちゃんと我慢しないと、身体の中から温まらないよ」

 その見透かしたような態度から、先ほどの丸薬がそういう目的のものであったことがわかる。
縄をほどく様子もなく、姉の痴態をじっと見つめるリムルル。開脚させられて無防備なすぼまりが収縮するのがはっきりと見え、ナコルルが必死に我慢している様子が手に取るようにわかる。

「だめ、だめっ…でちゃぅっ!」

 ナコルルの悲鳴と共に排泄口が一瞬盛り上がったかと思うと、一筋の薄茶色の液体が漏れ出す。先ほどの薬によって相当便が柔らかくなっているようである。そのまま簡単に決壊してしまうかと思われたが、下腹部全体の筋肉を使って必死に出口を締め上げたことによって最悪の事態はまぬがれる。
しかし、強烈な便意と痛みは治まることなく定期的に濁流のように押し寄せては、少しずつ彼女の体力を奪いつつあった。

「離してぇっっ!お願い…厠に行かせてぇぇっ!」

「こんなはしたない声だすんだ、姉さま…恥ずかしい…」

 リムルルのからかうような台詞には答えず、必死に耐えるナコルル。首筋からは汗が滴り落ち、自由の効かない両足をできるだけ縮めるようにして下半身に力を込めなおす。痛みをまぎらわせようとするためか、後ろ手に縛られた両手の爪を床の木板に立てて引っかくような仕草を繰り返す。

 もう限界かな…そんなことを考えながら姉の様子を眺めていた時、リムルルは突然殺気を感じて辺りを見回す。素早く土間に飛び降りて戸板に耳を当ててしばらく外の様子を窺っていたが、少し慌てたような素振りをみせて戻ってくる。

「なに…?」

 荒れ狂う便意以外のことに全く気が回らない様子のナコルルだったが、周囲に緊迫感が漂いだしたのを感じて虚ろな目で妹の方を見上げる。当のリムルルは懐から小刀を抜くと、ナコルルの足首と両手を拘束していた縄を次々に切って解放する。そして小屋の奥の方に放り投げてあったナコルルの刀を持ってきてそばに置く。

「持っていた方がいいわ。ナコルル」

 そう言って裏口の方に歩き出すリムルル。
痛みに耐えながらやっと半身を起こしたナコルルが声をかける。

「何が…あったの…?」

「すぐわかるわ。最後まであなたと遊びたかったけど…。残念だわ。また会いましょう。」

 戸板に手をかけたリムルルが最後に振り返って言った。

「そうだ。外にいる人たちはわたしと関係ないからね。」

「外……?」

「さよなら、ナコルル」

 一人残されたナコルルだったが、何かを考える暇もなく、さらに強烈な波が絶え間なく下腹部に襲ってくる。

「(厠に…行かなきゃ…)」

 外にある厠にたどり着けるかどうかは自信が無かったが、とにかく周囲の状況を確かめるためにも動くしかない。投げ出していた脚を引き寄せると、膝立ちの姿勢からゆっくりと腰を持ち上げていく。
少しずつなら歩き出せるかも……そんな楽観的な予測が頭をよぎるが、膝が伸びきろうとした直前、熱い内容物が後ろの蕾から少量ではあったが滴り落ちたのを感じる。

「く…はぁ……ぅ……やぁぁぁっ!!」

 もう疲れ果てた下腹部にはほとんど力が入らず、お尻の周りの筋肉だけで決壊を防いでるような状況であった。濁流は出口付近で渦巻くように出口を求めて荒れ狂っている。ナコルルは崩れ落ちるように再び腰を落として膝立ちの姿勢になると、踵で出口の上を押さえつけるようにして最悪の事態を必死に防ぐ。

「(やぁ…なんか……へん……)」

 必死に力を入れる肛門とそれを踵で押さえつける行為がしびれにも似た感覚をナコルルの下腹部全体に広げる。押さえているのは後ろ側なのに、刺激がナコルルの女の部分へ伝わっていく。波が押し寄せる度に、それをせき止めようと力を込め直す度に絶頂に達したばかりの女淫に快感がはっきり収束していくのがわかる。

知らず知らずのうちにナコルルの手が両足の間に伸び、股の間をそっと撫で上げる。

「ぁ…………!」

 リムルルに愛撫されていたときに嫌になるほど味わった感覚が再び身体に走る。
しかし、その一瞬の隙を逃さずに緊張の緩んだ出口から内容物があふれて踵を濡らす。

「やぁっ、だめぇっ!、だ…めぇ…」
「(ここで…負けたら…もう、立ち上がれなくな…る……)」

 再び菊門に力を入れ直して耐えるナコルル。戦いで鍛えた身体と精神がすんでのところで彼女を危機的な状況から引き戻す。

…その時、彼女の耳に遠くの方で刀を合わせるような微かな金属音が響く。

「(やっぱり、外で何か起きてるのね…)」

 ふらつきながらも何とか立ち上がると、震える脚を確かめるように一歩ずつ踏み出す。
小屋の奥に投げ捨てられてあった巫女装束を手にとって片足ずつ通していくが、そんな普通の動作をするだけでも、女としての悦びと苦痛が交互にナコルルを襲う。さすがに帯を締める余裕は無く、服がずり落ちないように押さえながら刀を拾うと土間を降りて戸板を横にずらす。

「(……!!だれ!?)」

 果たして小屋の前には数人の人影があった。中に入る前より少し雪が激しくなっていたが、ぼんやりと黒装束の男たちがたたずんでいるのが認められる。一瞬カムイコタンの村人かと思ったが、その忍びのような異様な出で立ちと、何かにとりつかれたような彼らの虚ろな目が事態の異常さを感じさせた。

「(まさか…魔性にとりつかれているの?)」

 旅先でも経験のある状況に、ナコルルは素早く判断を下して行動を起こそうとするが、先ほどから猛威を奮い続けている強烈な便意のせいで足を思うように運ぶことができない。
刀を抜いて男たちを威嚇しながら家の裏手に回りこんで脱出の機会をうかがうが、小屋の角の陰から飛び出してきた男と刀を合わせる事態に陥ってしまう。

「いやぁぁっっ!!!!」

 まともに受け止めることができず、男と一緒にお尻から崩れ落ちるナコルル。尻もちをついた拍子に緩んだ肛門から排泄物がしょぼしょぼと溢れ出す。

「(だめぇ!開いちゃ…やぁ…ぁぁ)」

 なりふり構わず覆い被さった男を振り払うと、起き上がって走り出そうとするが、一歩踏み出した瞬間に男の手に足の裾をつかまれて平衡を失う。帯を締めていない服がずり落ちそうになり、思わず手で押さえようとしたことで受身もとれないまま、そのまま顔の方から上半身を深い雪に突っ込ませてしまう。

「きゃっ!!、ぁ…や…ぁ…」
「もう…だ…めぇ……だめぇーーーー!!!」

 力を失った門めがけて、渦を巻いていた内容物が一気に駆け下りる。
破裂音と共に外へ勢い良く排出された、どろりとした流動体が白い衣装を茶色く染め上げる。それは太腿にも大量に伝い落ち、自分が情けなく粗相してしまったことをナコルルに自覚させる。
そして括約筋が弛緩し切ったことで尿道口が緩むと、そこからも熱い小水が迸り、内腿を伝って便と一緒になり、雪の上に茶色い液体となって滴り落ちる。

「でちゃ…ぁ…ぁぁ……」

 解放感のせいか、先ほどよりはっきり感じられるようになった快感に身を浸しながら、下半身を震わせる。人一倍強かったはずの羞恥心はどこかに消えてしまったらしく、尻を高く上げたままの姿勢で、まだ圧迫感の残る腸の中から最後の内容物を押し出そうと力を込める。

 しばらく自分が危機的な状況に置かれていることも忘れて雪に顔を埋めながら熱い吐息をついていたナコルルだったが、突然背後に殺気を感じて振り返ると、男がゆっくりと立ち上がって刀を構えようとしているのが見えた。

「(そうだ…逃げなきゃ…!)」

 まだ力の入らない体を引きずるように持ち上げると、とにかく人気の無いほうへ走り出す。しかし、しばらく走り続けると、自分が冷静な判断力を失っていたことを自覚する。

「(しまった!…崖の方に……)」

 切り立った崖の下の方から滝壷に流れ落ちる水の音が耳に入る。後ろを振り返れば、黒装束の集団が迫ってきている。
体力のほとんど残っていない身体と、疲弊しきった精神はこれ以上の戦いが無理なことを彼女に告げていた。

「(もう…だめなの…?)」

 一人が切りかかって来た時、それを受け止める術は残されていなかった。

「きゃぁぁぁぁっっ!!!」

 深く積もった雪に足をとられてそのまま崖から滑り落ちるナコルル。薄明るくなってきたカムイコタンの森の中に白き巫女の悲鳴が響いた……。







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