直子は電車の外を流れる景色をぼんやりと眺めていた。 朝のラッシュ時ほどではないものの、ターミナル駅に到着する前ということもあり、周囲にはこれから遊びに出かけるといった風の家族連れやカップルで混雑していた。彼女もこれから親しい友人と買い物に行く予定である。普段であれば、今日はどこに行こうか、どこで食事しようかなどと楽しいことを考えている頃であろう。 しかし今朝のことを思い出すと、とてもそんな気分ではいられなかった。家に誰もいなかったことを幸いに、シーツとパジャマは何とか洗濯できたが、ドライヤーで必死に乾かした布団にはまだ大きな染みが残ったままであった。外に干したまま外出するわけにもいかず、ベッドの上に畳んだままの状態である。家族にばれたらどうしよう…という心配はあったが、友達との約束を反古にするわけにもいかなかった。 「(なんで…こんなことになっちゃったんだろう…)」 もたれかかったドアの窓から見える景色に再び目をやりながらため息をつく。 「(千奈美に相談してみたいけど…)」 今日会う親友に思いをめぐらす直子。普通の知り合いにこんな幽霊話のようなことを話しても一笑に付されるだけだろう。千奈美は小学校に入る前からの幼馴染で、とても気心の知れた関係であった。性格の穏やかな同い年の彼女は、直子の話すことをいつも親身になって聞いてくれる。今回の一件もきっと真剣に聞いてくれるだろう。それに同じ小学校に通っていた千奈美は例のトンネルのことも覚えているであろうから、話を切り出し易いかもしれない。 そう決めたら幾分気持ちが楽になった。嫌な気分を振り払うように首を左右に振ると深呼吸をするためにゆっくり息を吸い込む。 「(……!)」 直子の鼻腔を微かな刺激臭が通り抜けた。今朝起きたときに体中にまとわりついていたあの匂いが空気に混じっていたような気がする。 「(やだ…まだ残っていたの?)」 小水で濡れた下半身は何度も熱いシャワーで流したはずである。それでもまだ自分が排泄したものの匂いが残っていたのだろうか。 意識し過ぎているだけかもしれなかったが、履いていたセミロングのスカートの上から下腹の辺りを確かめるように手で押さえた。そしておそるおそる下の方に腕を伸ばしていったその時、スカートの中で何かが蠢いたような気がして慌てて手を引っ込める。 「ぃっ……!」 思わず喉の奥のほうから短い悲鳴が漏れた。昨日の電車の中での出来事がフラッシュバックのように頭の中に甦った。しばらくそのままの姿勢で固まっていたが、特にそれ以上の異変は感じられない。こっそり周囲を見回して誰も自分の方に注意を向けていないことを確認すると、急に高まった鼓動を静めるように両手を胸に当てて深呼吸した。 気のせいだったのかな…。そう思った瞬間だった。 「ひぁっ……!」 先ほどよりもはっきりとした悲鳴を上げてしまう。パンティの底を爪で引っ掻かれたような刺激が股間に走った。最初は気のせいかと思ったが、続いて内腿を手で撫で回されるような感覚が直子を襲う。 先日の通勤電車の中では身体を調べ上げるかのように色々な場所を触られたが、今日はまるで彼女の身体を知り尽くしてると言わんばかりに、直子の嫌がる場所を的確についてきた。嫌悪感と恐怖感で満たされていた直子の心の中にゆっくりではあるが、ハンカチに水が染み渡るように官能が広がっていく。 認めたくない感覚に身を震わせながらもこれ以上声を上げてしまわないように必死に耐える直子。後ろの様子はわからないが、先ほど上げた悲鳴で何人かの乗客がこちらを注目しているかもしれない。 「(なんで…こんな……)」 あっという間に腰の奥の方まで熱くなってきた。下着の上からの愛撫なのに、女の谷間の上端あたりを円を描くように数往復ほど揉み込まれただけで、若芽が簡単に露出されてしまったことを自覚する。 「………!!!」 一番敏感なところが下着と擦れ合った瞬間、痛みを覚悟して身体を固くしていた直子だったが、思いがけない快楽が全身を走り、声も無く身体を跳ね上げてしまう。そして女芯のみならず、陰部全体がいつの間にか潤い始めていたことに気付く。 「(ゃぁ…こっち…見ないでぇ……)」 異様な愛撫から逃れることはできないとわかっていても、思わず腰を後ろに引いてしまう。もし他人が見ていれば、突然前触れも無く身悶えし始めた彼女に目を引かれてしまっていたであろう。実際、周囲の雰囲気から不審な視線が自分に集まり始めているように感じられた。 ドアの窓ガラスに額と両手を押し付け、唇を噛み締めて身体の反応を押さえ込もうとする直子。しかし、愛撫がお尻の方から一番敏感な場所まで往復する度に肩をびくっと震わせてしまう。次第に大胆な動きになる何者かの”手は”狭間を押し広げるようにしてパンティごと奥の方に進入し、濡れそぼった内壁を刺激する。 快楽に溺れている証拠か、口の端から少しずつ涎が零れ始めるが、今の彼女にそれを拭っている余裕は無かった。 「ゃ……ん…んぁぁっっ!!」 我慢しきれずに小さな嬌声が漏れる。慌てて片方の手で口を押さえたものの、今の声には自分でもそれとわかるほど、はっきりと女の悦びが混ざっていた。下着の上から触られているだけなのに…電車の中なのに…このままじゃ……。身体の昂ぶりは収まる様子もなく、ひたすら高みへと上っていく快楽に溺れそうになっていたその時だった。 「(や…何…?やだぁっっ!!)」 パンティの底が引っ張られたように感じた次の瞬間、ゆっくりと引きずり下ろされていく感触が下半身に伝わった。慌ててスカートの上から下着を押さえつけようとするが、厚手の生地の上からでは引き留めることはできなかった。あっという間に太腿の真ん中辺りまで下ろされてしまう。 濡れた秘所がスカートの中で外気にさらされ、冷やりとした感覚が伝わるが、それすら甘い刺激となって直子を悩ませる。何とかパンティを元に戻さないと…。混乱する彼女をよそに、大切な場所を守っていた下着はさらに下の方に引っ張られてしまう。 「(うそ…見られ…ちゃう。)」 下に落とした直子の視線の先に、膝にからまる白い布があった。秘所に当たっていたクロッチの部分が濃い色に変色しているのがはっきりと見てとれた。 「(せめて…スカートの中に…)」 このままでは誰かに見られてしまうかもしれない。腰をかがめてパンティに手をかけようとする直子。しかし、次の瞬間、お尻の底を襲った衝撃に飛び上がるような仕草を見せる。 「きゃふぅっっ!!!」 突然お尻の谷間、後ろのすぼまりを押し広げて指のようなものが進入してきた。快楽に割り込んできた鋭い痛みで直子の眼が大きく見開かれる。反射的に背筋を伸ばして菊門に力を入れ、異物の進入をはばもうとするが、一度潜り込んだ指は直腸の粘膜を擦り上げながらさらに奥へと進んで行く。 「(痛いっ…お尻なんて…嫌ぁっ…!)」 経験の無い感覚にとまどう直子。ドアに体を預けるようにしながらつま先立ちになり、少しでも衝撃を和らげようとするが、何者かの指は彼女のお尻ごと持ち上げるようにしながら、根元まで蕾の中に進入する。 「ゃ…あ…だめぇ……うぁぁ…」 埋め込まれた指が奥の方で妖しく動き、腸の中をかき回される感覚が直子を打ちのめす。腸壁を押し広げるように指が移動するたびに、便を排出する直前のような違和感が下腹部を襲った。 「(何か…変になっちゃうよぉ……)」 痛みの中に少しずつ官能が混ざり始める。自分では気付いていなかったが、スカートの中で無防備に晒された女陰の奥から新たに熱い愛液が湧き出し、少しずつ太腿を伝って零れ落ちていた。つま先立ちで頑張っていた下半身から力が抜け始め、膝ががくがくと震える。 「(もう…無理…耐えられ……ない…)」 吐き気を催すほどの嫌悪感と、屈辱感が頭の中を支配するが、痛みの混ざった快感が絶え間なく下半身から全身に広がっていく。 甘い痺れで菊門の感覚がほとんど無くなって来ると同時に、何とか体重を支えていた膝が少しずつ折れ、直子の腰の位置が少しずつ下がり始めた。しかし、そんな様子を感じ取っていたかのように、もう一度お尻の底へ下から突き上げられるような激しい衝撃が加えられた。 「ひんっっ………んぁぁ…あぁっっ…!!」 再びのけぞるように身体を仰け反らせた直子。衝撃のあまりの激しさに、つま先が浮くような感覚を覚える。背筋を妖しい電撃が走り抜け、はた目からでもわかるほど膝が震えた。 そして弛緩し切った秘所の奥の方から熱い液体が細い道を通って噴き出そうとしているのを感じた。 「(いやぁっ……出ちゃ…出ないでぇっ……)」 必死に下半身に力を込めて決壊を防ごうとするが、後ろの蕾の奥をかき回されるような刺激に邪魔されて自分の身体を制御することができない。しかも身体を支えるのに手一杯で、出口を手で押さえることすらできない。 為す術も無く、太腿に細く伝い始めた金色の液体の感触を感じる直子。絶望感で一杯になりながら、おもらしが止まってくれることを祈ることしかできなかった。そんな彼女の思いをよそに、恥ずかしい門は次第に開かれてしまい、排泄の勢いが増してきてしまう。既に靴下まで濡らし始めた熱い小水は、太腿の付け根のところで四方に飛び散り、スカートを内側から濡らし始める。 「(もうだめ……早く…駅に着いて……)」 スカートの端からもおしっこが滴り落ち、周囲の乗客がざわめき始めた様子がひしひしと感じられた。そして恥ずかしい排泄感さえもが官能を昂ぶらせてしまう自分の身体の情けなさに涙が零れ落ちた。 「大丈夫?お姉ちゃん?」 ドアのところに立っていた直子のすぐ脇、座席の端に座っていた初老の女性が声をかけてきた。その女性の方からは粗相の様子は見えなかったが、突然泣き出した直子を心配そうに見つめていた。 「あ……あぁ……」 何か答えなくてはと思うが、言葉にならない。尿道口からはひたすら排泄が続き、足元には透明な水溜りが少しずつ広がり出していた。今度こそ気のせいではなく、小水特有の匂いが車内に広がる。頭の中が真っ白になり、何も考えることが出来なくなっていた。 身体を支えていた腕からも力が抜け、その場に崩れ落ちてしまいそうになったその時、急ブレーキがかかってドアが横に開いた。よろめくように車外に出る直子。後ろから誰かが声を掛けてきたような気がしたが、振り返らず、身体を引きずるようにして必死に駅のトイレを目指す。運良く空いていた個室に飛び込むと、蓋が閉まったままの洋式便器の上に腰を下ろす。 座った瞬間にスカートの中で冷やりとした感触が広がり、自分が情けなくおもらししてしまったことを再認識させられた。 「(あたし…人前で…何てこと…を…)」 30分ほどそのままの姿勢で泣き崩れる直子。ぐっしょりと濡れた靴下が冷えてきて、気持ち悪さを増幅させる。 そして、ふと思い出したように腕に掛けていたバッグの中を探ると、携帯電話を取り出した。 「もしもし…千奈美?今日…あたし…行けない……ごめんね…ごめんね…」 待ち合わせ場所にいるであろう親友にそれだけ伝えると、千奈美が心配そうに話し掛けて来るのを無視して電源を切ってしまう。 「帰ろう……」 夢遊病者のようにふらふらと立ち上がると、濡れたパンティを脱いでごみ箱に放り込み、トイレットペーパーでスカートに広がった染みの跡を拭き始めた…。 |
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