「昨日はどこに行ってたの?」 部屋に入ってくるなり綾香が口にしたのは、予想していた通りの言葉だった。 「何度も電話かけたのよ」 「急な用事が出来ちゃって。携帯は家に忘れて……」 切れ長の瞳がこちらをじっと見つめている。普段から感情の起伏をさほど見せないその美貌に怒りの色は見て取れない。綾香の意外な冷静さに困惑し、予め考えていた言い訳が口から出てこない。 「……ごめんなさい!」 やっとのことで喉の奥から謝罪の言葉を絞り出す。 「そう。用事があったなら仕方ないわね」 相変わらず彼女の口調は変わらない。その淡々とした受け答えの中にも、実は怒りの感情が込められていたりするのだろうか。そう言えば、綾香が人並みに喜怒哀楽を露わにしたところを見たことがない。 「それでね」 葵にはもう一つ謝罪すべきことがあった。昨日借りていた制服を手に取り、恐る恐る綾香に差し出す。 「スカート汚しちゃって……本当にごめんなさい」 綾香は怪訝な表情を浮かべながら、綺麗に折り畳まれた制服を受け取った。スカートを床に広げると、長い黒髪を耳の後ろのところまでかき上げながら顔を近付け、生地の状態を確認する。 「何かこぼしたの?」 スカートの中央部には薄っすらと丸い染みが残っている。昨夜洗濯して小水で濡れた部分は綺麗になったのだが、最後に出してしまった粘液の跡だけは残ったままであった。 「(あ……)」 色が僅かに濃くなっている箇所を、綾香の指先がなぞっている。思わず彼女の腕を掴みかけたが、『汚いから触らないで』なんて言えるわけがない。鼓動の激しい高まりを覚えながら、葵は指の動きを目で追っていた。 「構わないわ。クリーニングに出すから」 はっきりしない葵の態度にさすがに不信感を抱いたのか、綾香はこちらを真っすぐに見つめている。 「(どうしよう。昨日のこと、話した方がいいかな)」 黙っていようと心に決めていたが、綾香の視線から滲み出るプレッシャーに押され、葵の決意は脆くも崩れ去ろうとしていた。 「綾香さん、あのね」 「とりあえず着なさい」 「え?」 恐る恐る口を開きかけた少年の機先を制し、綾香は一旦受け取った制服を差し出した。 「『え?』じゃないわ。昨日の埋め合わせしてもらうわよ。せっかく昔の制服を引っ張り出してきたのだから、記念撮影しないとね」 そう言って立ち上がった綾香は、普段通りの明るい表情を浮かべていた。 「カメラ持ってくるから、着替えておきなさい」 「う、うん……」 綾香が階段を下りていく足音を聞きながら、手にした制服にぼんやりと残る染みを改めて確認する。 「(結局、話せなかったな)」 先ほどはタイミングを逸してしまったが、綾香も汚れのことはそれほど気にしていない様子だったし、いっそのこと何も打ち明けない方が良いかもしれない。ただ、響とかいう女の子が綾香に昨日のことを話す可能性だってあるわけだから、楽観できない状況であることは確かだ。 「よし、戻ってきたら話そう」 決意を確かめるべく、小声で呟いた時だった。ふと、自分が既にブラウスの袖に手を通しかけていることに気付く。頭の中で必死に思案を巡らせている間にも、体は自然と着替えを始めていたようだ。 初めて女の子の洋服を着た時は、シャツのボタンの留め方が逆ということだけで相当面食らった記憶があるのに、今では随分と慣れてしまったものだと思う。葵は部屋着のトレーナーを下着と一緒に脱ぐと、女の子用のショーツを手に取った。 一度は自らの小水でぐっしょりと濡れてしまった下着だ。昨夜洗濯はしたが、ほのかにおしっこの香りが漂っているような気がする。 「(後でもう一回洗濯してから返そう)」 そんなことを考えながらショーツを履き、スカートに足を通す。腰のホックを留めてファスナーを上げながら鏡の前に移動した。 「(やっぱり染みが目立つなぁ)」 スカートの位置を調整し、正面に残っている恥ずかしい痕跡を少しだけ端の方へ寄せてみる。布地が揺れた拍子におしっこの残り香が立ち昇って鼻腔を微かにくすぐったような気がした。再び電車の中での恥態が思い起こされる。 「(どうしよう)」 鏡に映る自らの顔が紅潮していることに気付く。いつの間にか呼吸が荒くなり、瞳も若干潤んでいるように見える。葵は部屋を出ると、階下の台所へ向かった。 ----------------------------------------- 「ふぅ」 冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出すと、コップに注いで一気に飲み干した。少し顔の火照りが収まったような気がする。再びお茶でコップを満たすと、今度はゆっくりと喉に流し込んでいく。 「ん……」 下腹へと冷たい感覚が下りていき、太腿がぴくっと震えた。家族は皆出かけていて、今日家にいるのは葵一人だ。誰もいない一階の部屋は暖房も入っておらず、床も冷たいままである。スカートの下に冷気が入り込んできて、足下から体温を奪っていく。続けて急速に下腹が重くなってきた。既に自分の部屋にいた時から、少しお腹が張っていたことを思い出す。 綾香の撮影会は一旦始まると、なかなか葵を解放してくれない。今のうちに用を足しておこうとトイレに向かうが、コップを持ったままだったことに気付き、一旦キッチンへと戻る。 「(あれ?)」 その時、玄関の呼び鈴が鳴った。少し間をおいて、扉が開く音が聞こえてくる。綾香が戻ってきたのだろうか? セールスや宅配便にこの格好で対応するのは気が引ける。まず廊下の角からこっそりと玄関の様子を窺った。 「(綾香さん?)」 学校の制服を着た女の子の人影が目に入る。綾香の制服だ。葵と一緒に写真を撮るためにわざわざ着替えて来たのだろうか。後日この短絡的な思考と行動を後悔することになるのだが、警戒心の緩んだ少年は廊下から玄関へと小走りに駆けて行く。 「!!」 そこに立っていた女の子は制服こそ同じだが、背格好も髪型も綾香とは違っていた。自分がとんでもない勘違いをしたことに気付き、顔から一気に血の気が引く。 「ごめん、玄関開いてたか……ら」 葵に劣らず驚いた表情を浮かべて玄関に立ち尽くしていたのは、響だった。しばらく無言のままお互いの視線が絡み合う。 「(どうしよう、どうしよう)」 響が何か言おうと口を開きかけたのを見て、葵はきびすを返して廊下を走り始めた。 「ちょっと待って! あ、お邪魔します」 少し間の抜けた声を背後に聞きながら階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込んだ。しかしドアを閉めようとした瞬間、追いついてきた響に腕を掴まれてしまう。 「待って、よ。葵……ちゃん」 響は荒い呼吸の合間に切れ切れに声を絞り出す。息は完全に上がっていたが、葵の腕を掴む力を緩めようとはしなかった……。 ----------------------------------------- 「何でここに?」 長い沈黙の後、葵は恐る恐る尋ねてみた。二人は部屋の中央で向かい合って座っていた。興味深そうに室内を見回していた響が正面を向いて答える。 「簡単よ。クラス名簿見て藤崎綾香の住所を調べたの。それで家の前まで来てみたら、お隣から藤崎が出てきてさ。そこの表札みたら、家族の名前に『葵』って書いてあるから、もしかしてと思って」 響は気の強そうな瞳で真っ直ぐに葵を見据えながら話を続ける。 「本名だったんだ。女の子の格好してるから、嘘の名前使ってるかも、なんて思ってたけど」 確かに葵の家の表札には家族全員の名前が書いてある。でも、何故綾香さんの家ではなく、うちに来たのだろうか。 「綾香さんに会いに来たんですよね?」 「そうだけど、本当に用事があったのは葵ちゃんだから。藤崎には君のことを教えてもらうつもりだったんだ。……玄関開けたらいきなりはち合わせるとは思ってなかったけどね」 「僕に? 昨日のことですか?」 葵の問いにすぐには答えず、響は少し意地の悪そうな笑みを浮かべる。 「普段からこんな格好なんだ」 「そんなことないけど……」 女の子座りの姿勢で腰を落としていた葵は、脚をそろえて座り直した。これから何を言われ……いや、要求されるのだろうか? この格好でいたところを外で見られている以上、何の言い訳もできない。震え始めた膝を手でぎゅっと押さえながら響の言葉を待つ。 「それはどうでもいいの。ところで葵ちゃん、コスプレに興味あるんだよね?」 「え?」 響が鞄から一枚の写真を取り出して葵に見せた。昨日も彼女が持っていたもので、イベント会場を歩く綾香と葵の姿が写っている。 「興味があるというか……」 「私もね、コスプレやってるの。結構その道では有名なんだよ」 少女は体を軽く預けてきて、耳元で囁いた。後ろで束ねた髪の毛が揺れて葵の肩にかかる。間近で見ると、わずかに色素が抜けたような、軽く茶系統の混じった色合いだ。 「僕、趣味でやってるわけじゃなくて」 葵は少し体を引き、響の顔を正面に見ながら答えた。 「え、藤崎に無理やりやらされてるの?」 彼女は瞳を見開き、驚いたような表情を見せた。 「だってそれうちの制服でしょ? 近所の男の子に、自分の制服着せて楽しんでるとか、ほとんど犯罪じゃん」 響は葵の側に手をつき、再び体を密着させてきた。今度は彼女の唇が頬に触れそうなほど、近い。 「ねぇ、一緒にイベント行こうよ。もちろん藤崎抜きで」 「え、と……」 スカートから伸びるお互いの太腿同士が接触して、きめの細かい肌の感触が伝わってきた。同時に腰の奥で何かがひくっと震える。こちらから体を引いたら気を悪くされそうな気がして、葵はただ身を固くする。 「大丈夫、ちょっと付き合ってもらうだけだからさ。藤崎には内緒にしておけばいいじゃない」 響は少し興奮気味に喋り続ける。葵の頬に熱い吐息がかかり、くすぐったい感触に思わず悲鳴を洩らしそうになる。 いつも姉のような態度で接してくる綾香と違って、目の前にいる少女は人懐っこく、友達のような口調で語りかけてくる。いきなり心の中に踏み込まれているような気分にさせられるが、不快感はない。初対面の時は意地の悪そうなイメージだけが残ってしまったが、普通に出会っていれば同世代の感じの良い女の子として接することができたのかもしれない。 「葵ちゃん可愛いし」 響は唐突に葵の腰に手を回すと、ぎゅっと身体を引き寄せた。 「ちょっ……」 シャンプーの香りと微かな汗の匂いが入り混じり、ふわっと漂う。脇腹を掴んでいる指の動きがダイレクトに伝わってきて、くすぐったさに身を捩る葵。 「(あ、やばい)」 体に不規則な力が加わった瞬間、葵は膀胱が想像以上に張り詰めていることに気付く 「ちょ、ちょっとトイレ」 そう言って響の体を押し退けると、慌てて立ち上がった。 「どこ行くの? 藤崎に連絡するつもり?」 響はとっさに葵の腕を掴み、厳しい表情でこちらを睨む。、 「トイレ……ずっと我慢してたから」 綾香に連絡するつもりは毛頭なく、本当にトイレに行きたいだけだ。そう言えば綾香が出ていってからどれくらい時間が経っただろうか。 「ねえ、ここで…してよ」 「ここで? するって?」 意図を理解できず、オウム返しに聞き返した時、物欲しげに潤む少女の瞳がふと目に入り、背筋に寒気が走る。 「ここで、おしっこしてよ」 「な、何言ってるの? 無理だよ」 気丈に拒む葵を無視して、響は話を続ける。 「藤崎に昨日のこと話した? まだでしょ? 二人の秘密にしておかない?」 「綾香さんには、これから話すつもりです」 そろそろ本当に綾香が戻ってくる頃かもしれない。背後のドアにちらっと目をやるが、まだそこに人影はない。募る焦燥感はますます少年の尿意を増大させていく。 「話せるの? 駅で、女の子の前で、……オナニーしちゃったこと」 その言葉を口にするのはさすがに恥ずかったのか、響は少し言葉に詰まる。 「そんなこと……」 「このことが学校にバレたら、藤崎もやばいと思わない?」 自分は今、脅迫されているのだろうか? 相変わらず響は熱っぽい瞳で葵を見つめているが、人に何かを強要する時の表情ではないような気もする。 「この中にしてよ」 「え?」 響は側に置いてあったガラスのコップを手に取ると、葵の方へ差し出した。 「無理無理! 絶対無理っ!」 彼女の意図を理解した瞬間、葵は飛ぶように立ち上がると再びドアの方へ向かって走り出した。しかし数歩踏み出したところで、背後から抱きしめられてしまう。 「待ってよ!」 柔らかい感触と共に、少女の体温が背中から伝わってくる。一瞬体の力が抜け、同時にショーツの底に微量の液体が迸る感覚があった。自らの下腹部が既に決壊寸前の状況であることを悟り、絶望で全身の血の気が引いていく。 「や、あっ!」 また綾香の下着を汚してしまうことを恐れ、スカートの中に手を入れてショーツを膝上までずらした。 「お、やる気になった?」 決して彼女に従う気になったわけではない。ただ、出口の前にあった一枚の布が無くなったことで、体が排泄行為の準備を始めてしまったのだ。仮に今、解放してくれたとしてもお漏らしせずにトイレまでたどり着ける自信はない。 葵は覚悟を決めると膝を床につき、コップを両脚の間に置いた。スカートが汚れないように中央を少しつまみ上げ、空間を確保する。 「んっ……」 限界近くまで水を溜め込んだ膀胱の排出口を締め付ける力を、少しずつ緩めていく。しかし……。 「どうしたの?」 同じ姿勢で固まっている葵の様子を見て、響は怪訝な表情を浮かべて言った。 「見られてると、出ないよ……」 尿意はこんなに切迫しているのに、何故か最後の出口だけが開かない。そんなやり取りをしている間にも下腹部の内圧はどんどん高まってきて、葵の華奢な体を責め苛む。 「じゃあ後ろ向いてるから」 そう言って響は体の向きを反転させた。 「はぁ……ぁ……」 ほんの少しだけ気が楽になったのか、何度か深呼吸を繰り返す内に下腹部の緊張が緩んでくる。 「あっ!」 尿道の奥でむず痒さが湧き起こり、続いて先端からちょろっと小水が迸る。次第に水流は激しさを増し、コップの中で派手な音を立てながら渦を巻いた。 「(音、聞こえちゃう)」 早く終わって欲しいと願うも、大量に溜め込んでいた分、放出の勢いはなかなか弱まらない。葵はスカートを持ち上げてコップの様子を確認してみる。 「こぼれるっ!」 容器は既に九分目のところまで黄色い液体で満たされていた。どう考えても体内に残っている分を受け入れるだけの容量はない。 「何? どうしたの?」 「見ないでっ!」 響が振り向いたのを見て、葵はとっさにスカートを押さえた。直線的な水流を描いていた小水が行き場を失って太腿を伝う。 「あ! あっ!」 必死に括約筋を引き締めて漏出を食い止めたが、既に小水はスカートの裏地を濡らし、裾のところからポタポタと床に零れている。 「あっち、向いてて……」 少し楽になったものの、下腹部は相変わらず限界近くまで張り詰めている。息をこらえ、歯を食いしばって耐える少年をあざ笑うかのように、膀胱周りの筋肉は排泄行為を再開すべく収縮を始めた。さらなる屈辱の予感に身を震わせる葵の頬を一筋の涙が伝う。 「や、ぁっ……あぁああっ!」 先ほどより少し腰を引いた姿勢で、再び決壊が始まる。狙いの定まらなくなった小水は堰を切ったように迸り、四方八方に飛び散る。コップの水位もすぐに限界点に到達し、中の液体がフローリングの床へと溢れ出す。 「いや……いやぁ――!」 温かい水たまりが膝を包み込む感覚と、そこから立ち昇ってくる恥ずかしい芳香に少年は羞恥心をかき立てられ、頬を深紅に染めながら子供のように泣き叫ぶ。 「ごめんね。後で拭いてあげるから」 葵の様子を呆然と見ていた響だったが、ふと我に返ったのか、近付いてきて少年の腕にそっと手を添える。本気で心配しているような表情だ。こんな事態は予想していなかったと見える。 「あ……ぁあ……」 人に見られながらおしっこするなんて、物心がついて以降記憶にない。それが肉親どころか、昨日出会ったばかりの少女の目の前で、着衣のまま下半身をずぶ濡れにしている。少年の心は屈辱と羞恥で埋め尽くされ、コントロールを失った身体は奥の方から次第に熱を帯び始めていた。 ----------------------------------------- しばらくして排出の勢いは次第に弱まり、水流も途切れがちになる。 「どうしたの? 終わった?」 「や……ぁ……」 葵は全身を震わせてか細い声を絞り出す。決して膀胱の中が空っぽになったわけではなかった。排泄行為を中断させたのは、男の子の生理反応だった。おしっこを見られる恥ずかしさが深層意識の中で別の感覚にとって代わり、快楽中枢を刺激する。スカートの奥で危うい感覚がどうしようもなく膨れ上がってくるのを感じ、虚脱感に襲われた葵の両手から力が抜ける。 「見ないで……」 抑えを失った男の子の中心が、布地をひくひくと押し上げる。響は無言のまま惚けたような表情を浮かべ、上下する膨らみをじっと見つめている。 「(なんで、また……治まってよ……)」 凄まじい尿意から解放された体に広がる浮遊感のような心地良さと、理性の糸が切れかけるほどの恥ずかしさが入り混じり、葵の思考回路をショートさせる。 「(綾香さん、助けて……)」 脳裏に思い浮かべた女の子の姿が次第に霞んでいく。 「ちょっと、それ……」 「やだやだ――! あ、あぁあ――!」 再び少年の瞳から大粒の涙が溢れ出す。響の視線を意識して、再びスカートを両手でぎゅっと押し下げた。先端が布地と擦れる刺激が呼び水となり、腰の奥で熱い衝動が一気に弾けた。頭の奥が痺れ、快楽の波が全身を襲う。 「や……ぁ……出ちゃう!」 性器の奥で渦巻いていた熱い粘液が尿道を通り抜ける。その感覚が少しだけ葵の意識を現実に引き戻した。 「だめっ!」 すんでのところで筋肉の収縮を止めようと試みるが、精を放つ悦びに打ち震える下半身はあっさりと少年の抵抗を排除する。 「あ……ぁ……」 薄れゆく意識の中で、スカートを汚してはいけないという思考が働き、とっさに裾を掴むと腰のところまでたくし上げた。これまで響の視界から隠していた恥ずかしい場所が完全に露わになる。 「んっ……ひぁあっ!」 括約筋の収縮と共に先端まで粘液がせり上がってくる。葵は足の指でぎゅっと床を掴み、無意識のうちに腰を反り返らせた。 「ひぅっ! ……あぁあああああ!」 羞恥に震え戦慄く葵の唇から、絶頂を示す悲鳴が洩れた。視界の中で閃光が何度も走り、体の底から脳天まで快楽の電撃が放たれる。 「んんっ! んっ!」 凄まじい快感が男の子の反射中枢をさらに刺激し、放出の勢いは激しさを増していく。可憐な少年の表情は、今や甘美な悦びに支配され、半開きの口からだらしなく涎が垂れる。射精がいつまでも続くような感覚にとらわれ、葵は快楽の限界を迎えていた……。 ----------------------------------------- 「ふぁ……」 溜め込んだ精液が一滴残らず絞り出され、張り詰めていた背筋の力が自然に抜けていく。霞がかった視界が次第に晴れてきて、最初に映ったのは足下に広がるおしっこの水溜まりだった。そして、視線を上げていくと……。 「あ……」 響は床に腰を落としたまま、茫然自失の表情を浮かべていた。彼女の胸元は葵が放った精液でべったりと汚れている。どろっとした粘液が制服の襟から少女の肌へと滑り落ちていくのが見えた。 「ごめ……」 葵は大変な粗相をしてしまったことに気付いたが、謝罪の言葉は響の虚ろな表情に吸い込まれてしまい、後はただ、歯の根を震わせながら少女の顔を見つめていた。 しばらくして、響がゆっくりと口を開く。出てくるのは憤怒の言葉だろうか。覚悟を決めて次の台詞を待っていた葵の耳に、聞き慣れた少女の声が遠くから届く。 「葵、着替え終わった? カメラ持ってきたからね」 今日何度目だろうか。葵の心は再び絶望の淵へと落ちていく……。 |
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