〜山道〜




 秋の昼下がり、ナコルルは一人山道を歩いていた。見通しの良い道。前後に誰かがいる様子は無い・・・が、

「誰かいるのっ?」

 突然人の気配を感じて振り返る。

 関所を抜けて山道に入ってからというもの、何度となく背中に気配を感じている。
ママハハがいれば空から確認してもらうところではあるが、あいにくと覇王丸への手紙を運んでもらっているために今はいない。

「気のせいね。きっと。」

 不安を振り払うように独り言を言うと、再び山道を歩きだす。

 四半時ほど歩いたころだろうか、急にナコルルが辺りを見回し始める。
今度は人の気配を感じたわけではない。

「どうしよう…ご不浄に行きたいかも…」

 なるべく気にしないようにつとめてはいたが、下腹部の辺りが相当張ってきている。
昼下がりとはいえ秋の風は冷たく、ナコルルの体温を奪っていた。

「ん・・・もう・・・駄目」

 風が吹き抜けると同時に体を震わせると、意を決して茂みの中に入って行く。
腰帯を解いて下の服を下げ、股布をずらしながらしゃがみこむ。
初めてのことではないが、女性の独り旅の中では緊張する瞬間のひとつである。

「ふぅ・・・・・・」

 ひとつため息をつきながら、体の力を抜いたその瞬間、背後で何者かが茂みをかきわける音が耳に入る。

「誰っ?」

 素早く服を引き上げ、腰帯を巻き直そうとするナコルル。脇に置いていた刀に手をのばし、音がした方向を見つめて戦闘態勢に入る。
しかし、茂みから現れたのは人間では無く、一匹の狼だった。
山賊の類いではないとわかって少し拍子抜けするも、身構え直して狼の攻撃に備える。

「この狼・・・?」

 一歩一歩近づいてくる狼を見つめているうちに、その獣に見覚えがあることに気付く。
人を乗せても軽々と走れそうなほどの体格。青紫色の体毛…
その時、狼の背後に人影が立つ。

「お久しぶりね、ナコルル」

「あなたは…レラ??」

果たして、茂みから現れたのは深紫色の衣装をまとったレラであった。

「何の用?何故あなたがここにいるの?」

 努めて冷静な口調で応対しながら、後ろ手で腰帯を結び直そうとする。
そんなナコルルの様子を見て、レラは見透かしたような笑いを浮かべながら、一歩一歩近付いて来る。

「どうしたの?そんなに慌てて… 顔が真っ赤よ、ナコルル」

「何でもないわ。ちょっと道に迷っただけで、あなたには関係ない…わ」

 口ごもりながら答えるナコルル。
そんなナコルルの様子を見て、口に手を当てて忍び笑いを漏らすレラ。
そして、彼女の妖艶な唇が開いた瞬間、突如殺気が走る。

「シクルゥ!」

「なっ……きゃぁぁっ」

 レラが狼の名を呼んだ瞬間、彼女の背後で息をひそめていたその獣がナコルルに向かって突進する。
後ろに飛びのいて避けたものの、突然のことに思わず悲鳴を上げてしまう。
結び直そうとしていた腰帯は落ち、刀も手から滑り落ちてしまう。

「何をするの!?レラっ」

「・・・そんなことを聞いてる暇は無いと思うけど」

 はっと気付いて後ろを振り返ったナコルルの目に、反転して再び飛びかかってくる狼の姿が映る。
間一髪で身をひねってかわすものの、バランスを崩してしまう。

「痛…や、やぁぁっ」

 そのまま尻餅をついた瞬間、下腹部に鈍痛が走る。
そして尿道を熱いものが通過しようとしているのが感じられる。

「(いやぁぁ。だめ。止まってぇ……)」

 液体が2、3滴漏れ出たような感触があったものの、何とか持ちこたえる。
しかしレラが現れる直前には一度括約筋を緩めて出しかけていたわけで、なかなか途中で完全に止められるものではない。

 一方、レラはそんなナコルルの事情はお構いなしに、戻ってきたシクルゥとともにさらに一歩一歩間合いを詰めてくる。

「来ないで…どうして…こんなことをするの?」

 事態が飲み込めないまま、また、理解する余裕も無いまま、ナコルルは逆に一歩一歩後退する。

 先ほどシクルゥが現れた時に、下ろしていた股布を履き直そうとはしたのだが、
慌てていたために、中途半端な位置で引っ掛かってしまっている。
下に履いていた服は何とか元の位置まで引っ張り上げることができたので、その恥態を隠すことはできたものの、
腰帯を落としてしまったために、押さえていないとずり落ちそうである。

 その時、ナコルルの耳に刀を抜く金属音が届く。

「(レラが刀を抜いた……!?私の刀は?どこ?)」

 先ほど自分が落とした刀を探して、左右に目を走らせるナコルル。しかし、その隙を見逃してくれるほど彼女たちは甘くはない。
目を逸らした瞬間、まさに電光石火のごとくシクルゥが間合いを詰めてくる。
そのままナコルルのみぞおちの辺りに体当たりする。

「くっ、ぁぁあぁ!」

 息が止まるほどの衝撃。その反動で背後の木に叩きつけられる。
その拍子に一瞬括約筋が緩み、今度は太股を伝わって落ちるのがはっきりとわかるほど、小水が漏れ出してしまう。

「いやっ、あ、あ、ぁ……」

 狼狽して思わず声を上げてしまう。今の攻撃による痛みも当然あったが、女性として生き恥をさらすわけにはいかない。

「(だめ、だめ、だめぇぇぇ)」

 前かがみになって内股をすりあわせて我慢しようとするも、止まりそうな気がしない。
思わず空いている方の手で、服の上から小水の出口の辺りを必死に押さえ付ける。

「うぁ、ん、んんーーー!」

 中腰になりながら恥しい部分を服の上から皺になるほど握り締め、その手は太股によってぴったりと挟み込まれている。
口を真一文字に結んで、腰をわずかにくねらせながら必死に耐えるナコルル。

 何とか激流のような尿意をやり過ごし、止めていた息を少しづつ吐き出す。
先ほど少し漏らしてしまったために、太股の一部に布が張り付いている。

「(どうしよう。粗相をしたことがレラにばれてしまったかも…)」

 少し思考を巡らす余裕ができたと同時に、周囲の異変に気付く。

「(そうだ、レラ。レラはどこへ行ったの?)」

 顔を上げたナコルルの視界には、彼女も、お供の獣の姿も映っていない。
あせって一歩前に踏み出そうとした時、ナコルルの背後、今まで寄りかかっていた木のあたりから声が響く。

「ここよ。ナコルル」

「なっ…!?」

 振り返る暇も与えられず、一瞬の内に両腕とも後ろ手にひねり上げられてしまう。

「きゃぁぁっ」

 思わず悲鳴を上げてしまうナコルル。
普段の彼女であれば、得意の体術でこの程度の拘束は簡単に脱出できるところだが、
余計なところに力を入れると我慢していたものが一気に決壊してしまうような気がして、自由に動くことができない。

 しかも今まで手で押さえていた下の服が少しずつずり落ちてきている。
何とか腰のところでとまってはいるものの、もう少しで恥しい箇所が露出してしまいそうである。

「やめて!離して下さい!離してぇ…」

 最後の方は少し涙声になりながら懇願する。

「どうしたの?そんな声出しちゃって…。おまけに腰までくねらせて。はしたない」

 からかうような調子のレラの台詞も、ナコルルの耳にはほとんど届いていない。
少し暴れたせいで、一度はおさまった尿意が急激に増幅されてしまい、頬を真っ赤に染めて必死に耐えている。

「そろそろかしらね」

 そう言うと、レラは背後からナコルルに体を密着させて、股の間に足を割り込ませる。
そして片足を膝のところで抱え上げるようにして上に持ち上げてしまう。

「・・・・・・!!」

 思いもよらないレラの行動に、ナコルルは声も出ない。
しかも、いつの間にか両腕を背中の後ろで布のようなもので縛られてしまっている。
決壊一歩手前でこらえていた彼女にとって、足を大きく広げられてしまったことは最後の砦を失ったようなものである。

「だめーーー!離してぇぇ!ほどいて下さいぃぃ!」

 半狂乱で叫ぶナコルル。

「そう…もう粗相してしまいそうなのね…耐える姿がとっても素敵よ、ナコルル」

 艶やかな口調で耳元でささやくレラ。

「(やっぱり私が尿意を我慢しているのを知っていたんだ…でも…もう…だめ…)」

 そしてレラは空いている方の手をナコルルの下腹部に伸ばし、張っているお腹を押す。

「あぁぁぁぁっっ? いやぁぁ! 出ちゃう、出ちゃうーーー!」

 2度3度押すたびに、数滴ずつ股間を熱い液体が濡らしていく。
持ち前の強い精神力で何とか持ちこたえてはいるが、屈辱的な結末は目前に迫っている。

「あら。もう出しちゃうの? …でも、このままじゃ服が濡れてしまうわね。」

 そう言うとレラは懐刀を抜いて、巫女装束の股間の部分を縦にまっすぐ切り裂いてしまう。
布がはらりと両側に分かれ、ナコルルのまだ誰にも見せたことのない、秘所が露になる、
その薄い繁みが漏れ出した小水で少し濡れているのが見てとれる。

「いやぁぁぁーーーーー!見ないで、見ないでーーーー!」

 今度は秘所の回りを触るか触らないかという微妙な感じでなで回すレラ。

「ひん!、んんっ、きゃふぅっ、あ、あ、あぁぁぁっ」

 もはや嬌声のような悲鳴をあげることしかできないナコルル。いやいやするように首を振り、下半身を小刻みに震わせる。
もはや数滴ずつではなく、一瞬線を描くような量の小水が時おり漏れ出してしまっている。

「そんなところ触らないでぇ…っ、お願いだから離して…くだ…さい」

 俯き、半ばあきらめたような表情でナコルルが懇願したその時、レラは思いがけない行動に出る。

「いいわよ。ほら、行きなさい」

 抱え上げていた足を解放して地面に下ろしてやると、ナコルルの背中を軽く押す。

「え……? あ、あぁぁ…」

 突然拘束を解かれたことに驚くナコルル。

「(近くの繁みに飛び込んで・・・見られないように・・・)」

 といった考えが頭の中を駆け巡る。・・・が、彼女の膀胱はとっくに限界を越えていた。
両手で出口を懸命に押さえながら、内股のまま2、3歩歩きだすものの、すぐに立ち止まってしまう。

「見ないでぇ・・・あっちへ行ってぇ・・・」

 涙声でそう言った瞬間、”門”が完全に開いてしまったことを自覚する。

「もうだめぇ……とまら…ない…」

 秘所を押さえていた手の間から、湯気を立てながら液体があふれ出す。

「ふぁぁっ……あぁぁ……」

 全身が脱力し、そのまま”女の子座り”の体勢に崩れ落ちる。

「(出てる……あったかい……)」

 流れ出る小水は、服を尻の方まで一気に濡らしていく。
白い衣装なのにはっきりと濡れているのがわかる。そして吸収されない液体が地面にも落ち、黒い染みを作り始める。
ナコルル自身は放心状態におちいり、口を少し開いたまま恍惚とした表情を見せている。

「あらあら。そんなに盛大に粗相しちゃって。せっかく服が濡れないようにしてあげたのに、残念だわ」

 少しあきれたような表情をしながら、レラが言う。

「じゃぁね。ナコルル。次の宿場までに服が乾くといいわね。もっとも、もう夕暮れだから物取りに注意した方がいいかしら。」

「(楽しかったわ。ナコルル…。)」

 きっと耳には届いていないだろうと思いつつも、忠告だけ残してシクルゥとともに再び繁みの中に去って行く。

 後には、つま先までびしょびしょになりながら、時折り体を大きく震わせる白い巫女だけが一人残されていた・・・。








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