〜駅<後編>〜








――電車――

 モーターの回転音が高まり、レールが規則正しく金属音を奏でる。窓の外の景色が横向きに流れ始め、今までいた駅のホームが遠ざかっていく。
 帰宅ラッシュ前の時間帯であるため、車両内には数えるほどしか乗客がいない。響は葵の両肩を掴んで座席の端に座らせると、自らもその隣に腰掛けた。

 腰を落とした姿勢はさらに葵の膀胱に負荷を加え、水門ごと吹き飛びかねないほどに内圧を高めた。次の駅まですら耐え切れないのではないかと不安が募る。
 先ほど響に脱がされかけたショーツはお尻の半ばまでずり落ちたままである。元に戻したいが、人前でスカートをたくし上げるわけにもいかない。締め付けを失った突起が濡れた布地の奥でぴくっと震えた。

「私、やっぱり学校に戻ります……」

 乗客は少ないものの、向かい側には女性客が一人座っている。周囲に聞こえないように声をひそめて話しかけた。

「『私』? 『僕』でしょ? 男の子のくせに」

 そう言うと、響はスカートの上から太腿の間に手を滑り込ませてきた。

「やっ、あっ!」

「なに女の子みたいな声出してるのよ」

 響の手が太腿の付け根を無遠慮になで回す。慌てて少女の腕を引き剥がそうとしたが、下腹部に集中させている力が分散してしまうのが怖くて、まともに抵抗できなかった。
 揉みあっている最中、響の指がスカート越しに葵の下着に引っかかった。元々緩みかけていたショーツの上部から、男の子の部分が顔を出す。先端がスカートの裏地と擦れ、身体中に電気が走る。

「あっ、だめっ!」

 響の指が、隆起している箇所を確かめるように這い回る。

「離して! 触らないでっ!」

 響がさらに体重をかけてきて、葵の自由を奪う。座席の端に挟み込まれた葵は細腕一本で少女を押し退けようとするが、あまりにも非力に過ぎた。響の吐息が首筋にかかるくらいまで二人の距離が接近する。

「ひぁっ!」

 少女のしなやかな指から力が伝わってくる度に、下腹部の中心はそれを押し返そうとするような反応を見せる。

葵 「あぁ……や……」

 下半身から妖しい感覚が湧き上がり、小さな喘ぎ声が洩れた。自らの耳に届いたはしたない声に狼狽し、必死に唇を噛み締めて耐える。

「可愛い声出しちゃって」

 感度の増した性器の先端を、布地越しに響の指先がゆっくりと旋回する。そして少女のもう一方の手がスカートの奥に潜り込んできた。太腿の内側に素肌が触れ合う感覚が生じ、これまでより強い刺激が葵の細い腰に加えられる。

「かたくなってる」

「やめてっ……」

 尿意交じりの快感が押し寄せてきて、無防備な性器は制服の下でさらなる刺激を求めて揺れ動く。冷たい外気がスカートの奥まで入り込み、急速に尿意が高まった。

 少しでも力を緩めたら一気に決壊するのではないかという恐怖で全身を強張らせるが、その一方で腰の奥から生み出される熱い痺れが次第に括約筋の緊張を解いていく。

「触っちゃだめ……漏れちゃ……う」

 官能を享受するよりも、とにかくおしっこしたい。身体のどこかでスイッチが切り替わったような感覚があった。少しずつであるが、着実に限界は目の前まで迫っている。響の手がスカートの上や太腿の付け根を往復する度に、小刻みな痙攣が全身を走り抜けた。

「ほんとに、もう……限界、だよ……」

 一瞬膀胱が収縮して、少量の熱水が漏れ出した。括約筋に渾身の力を込めて決壊を食い止める葵。切なげに身をくねらせながら、両脚を突っ張った。学生靴が床と擦れてきゅっと音を立てた。

「や……ぁあ……出ちゃう!」

 ついに熱い液体が尿道を押し広げ始め、葵は背中を反り返らせて悲鳴を上げた。乗客たちの視線が二人に集まる。
 締め付けの緩くなったショーツの裏地に向かって、小水が勢い良く迸った。一度水門を越えた激流は容易には収まらず、下着を伝ってスカートへ、そして電車のシートまで瞬く間に水浸しにしていく。

「やだっ!あ、ぁ、あぁああっ!」

 急速に下半身に広がる生温かい感覚が、少年の理性を吹き飛ばす。周囲に人がいることも忘れ、半狂乱で泣き叫ぶ。

「ちょっと、静かにしてよ」

 予想以上に早く葵が限界を迎えてしまったことに、響も動揺の色を隠せない。とっさに手で葵の口を塞いだものの、二人が好奇の目にさらされている状況は変わらない。

「降りるよ!」

 いつの間にか電車が減速を始めていた。ブレーキ音と共に、窓から見える景色の流れがゆっくりと止まる。ドアが開くと同時に、響は葵の手首を引いて立ち上がった。中腰になった葵の太腿に何本もの透明な筋が生まれ、列車の床に水音を立てて恥かしい液体が零れ落ちた……。



――ホーム――

 何度も激流を止めようと試みたが、どうしても腰に力が入らない。太腿を伝って落ちる熱水はスカートや靴下、そして学生靴までも濡らしていく。おしっこが尿道を勢い良く通り過ぎる度に甘い痺れが下半身に広がり、緩みっ放しの括約筋は本来の役目を果たせないでいた。

 響に手を引かれるまま、葵はおぼつかない足取りでホームの階段の陰まで歩いて行く。先ほどまで乗っていた車両にいる乗客たちからは死角になっている場所である。
 足を踏み出す度に、小水をたっぷり含んだスカートが太腿に張り付いた。この気候ではすぐに冷たくなってしまうだろうが、今だけはその温もりが心地よく感じられた。自ら放出した液体の香りが立ち上って鼻腔をくすぐり、少年の羞恥心は激しく揺さぶられる。

「ん……ぁ」

 男の子の先端を布地が擦った瞬間、葵は喉から甘い声を洩らし、腰を小さく跳ね上げた。小水とは異なる粘性のある液体がほんの少し零れ出す。

「(なんで……気持ち、いいよぉ……)」

 『それ』は、スカートの一部をわずかに持ち上げて自らの存在を主張していた。脱がされかけて太腿に絡まっているショーツは、もう性器を隠す役割を果たしていない。
 先ほど響に触れられた時の刺激を身体がまだ覚えているのか、一向に熱が冷める気配がない。葵は頬を真紅に染めながら、身体を冷静に保たなければと、ひたすら念じ続けた。

「変態ね」

 突然耳元で響が囁いた。頬が触れ合うくらいの距離まで身体を寄せてくる。

「後ろでみんなが見てるよ。見られて感じてるわけ?」

「ぁ……あ」

 屈辱的な言葉が、響の吐息と共に耳の奥へ飛び込んでくる。その度に男の子の部分は収まるどころか、胸の鼓動の高まりに連動して激しく跳ね上がる。スカートと擦れることによって生み出される刺激が、快楽となって全身に広がっていく。

「電車、来ちゃうよ」

 はっとしてホームの発車票を見ると、響の言う通り、間もなく電車が入ってくるとの案内が表示されている。

「特急電車だから混んでるよ。乗り換える人も沢山いるから、君の『これ』、見られちゃうね」

「いや……やだよぉ」

 葵は子供のように首を左右に振りたくりながら、拒絶の声を洩らす。

「もう、時間ないよ。どうするの?」

 既に電車は遠目に小さく視認できるところまで近付いて来ている。ホームに到着してドアが開くまで、一、二分といったところだろうか。

「(どうしよう……)」

 先ほどから膝の震えが止まらず、立っているのが精一杯である。階段を駆け上がって駅の外へ逃げ出すという選択肢は、すぐに頭の中から消えた。

「ひっ……」

 せめて恥ずかしい膨らみを覆い隠そうと、スカートの上から手で押さえつけた瞬間、葵は微かな悲鳴と共に身体を跳ね上がらせた。

「んあ、ぁ……いやぁ……」

 軽く触れただけなのに、電撃のような快感が背筋を走り抜けた。上げかけた嬌声を噛み殺し、何とか緊張の糸を保ち続けたものの、腰が妖しく動いてしまうのを止めることができない。
 予想以上に敏感になっていた男の子の部分は、手をはねのけんばかりに激しく脈動する。熱い息を吐き出す唇は悦楽に戦慄き、端から唾液が零れ落ちて細い顎を伝う。

 無意識の内に性器を押さえつける手に力が加わり、腰の奥から痺れるような甘い疼きが次々と生み出される。屈辱的な自らの姿を意識する度に、羞恥心が呼び起こされるだけでなく、倒錯した快楽が葵の精神を支配する。限界近くまで角度のついてしまった隆起は、もう手で隠すことすらままならない。

「(もう……だめ)」

 後戻りのできない高みまで自分の身体が達しつつあることを自覚する葵。あとほんの少し手に力を入れるだけで絶頂を迎えることができる、という欲求に屈服しそうになりながらも、必死に歯を食いしばり、首を左右に振って最悪の結末を拒絶する。

「何頑張っちゃってるの? 変態の葵ちゃん」

 蔑むような表情を浮かべて葵の痴態を見つめていた響が、耳元で鋭く言い放った。
 
「ひぁっ! ……あ、あぁああっ」

 響の言葉が屈辱にまみれた心に突き刺さった瞬間、腰の一番奥がきゅうっと収縮した。視界に閃光が走り、火照った身体が快感で染め上げられる。一瞬ぴたっと全身の動きを止めた後、葵は再び激しく身を捩らせた。

「ふぁっ! い、あ、ひあぁあああああああ!!」

 周囲に響き渡った嬌声は、ホームに入ってきた電車の騒音によってすぐにかき消された。
 股間を押さえたまま、中腰の姿勢で身体を震わせる葵。嗚咽と共に何度も腰が跳ね上がり、隆起したスカートの頂点に染みが広がる。勢い良く放出された精液は布地を突き抜けて、スカートを白く汚し、布地で吸収しきれなかった分はポタポタと足元に零れ落ちた。

「ぁ……んぁ、あ……」

 自らの腰がはしたなく前後に動いているのを感じて一度は絶望感に襲われたものの、余すところなく快楽を受け入れたいという情欲が勝り、葵の理性はあっさりと押し流された。嗚咽の洩れる口の端から、飲み込み損ねた唾液が糸を引き、潤んだ瞳は焦点を失ったまま虚空をさ迷う。人前で恥ずかしい姿を晒してしまった屈辱よりも、熱い快感の余韻がただひたすらに心地良く感じられた……。








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